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nesu.jpg大きな館

NILSのページ、久々の更新です。今回はいきなりですが下巻に飛んで、52章「大きな館」が舞台です。

ヨーテボルイ出身のユダヤ人アウグスト・アブラハムソン(1817-98)が、甥オットー・サロモン(1849-1907)とともに、ネースの館の敷地内 に手工教育講習所を開いたのは1872年のことでした。子どもたちに手仕事の大切さを伝えたい、その教え手を育成したいという目的で作られたこの手工教育 講習所には、やがて世界中から受講者が集まるようになりました。日本からは1888年(明治21年)、当時の文部省の命を受けて、後藤牧太(東京高等師範 学校教授)と野尻精一(文部省視学官、のちに奈良女子高等師範学校初代校長)が参加しており、彼らのネースでの体験が日本の「図画工作」の創設につながっ たとされています。

作者のセルマ・ラーゲルレーヴも、親しかった女友だちソフィー・エルカン(1853-1921)とともに、たびたびここネースで夏を過ごしました。ソ フィーは、本の中で若主人と称されるオットー・サロモンの実妹にあたる人物です。セルマはオットーの命あるうちに『ニルスのふしぎな旅』を完成させたいと、後半部の執筆を急いだのですが、残念ながら間に合いませんでした。子どもたちの歌声により若主人が危篤状態を脱するという一場面に、作者の思いがしのばれるような気がします。
(2009年7月21日)