アメリカのオバマ大統領が国賓として来日され、昨夜は皇居で宮中晩さん会が催されました。宮中晩さん会では、フランス料理でお客さまをもてなすことになっています。
ちなみに、昨夜のメニューは、コンソメスープ、真鯛洋酒蒸、羊腿肉蒸焼、サラダ、富士山型アイスクリーム、果物(メロンとイチゴ)で、コンソメスープと羊腿肉蒸焼と富士山型アイスクリームは、宮内庁御料牧場の食材を使ったものだったそうです。
昨年には和食がユネスコの無形文化遺産に登録されたことですし、せっかく日本に来られたのだから、日本食でおもてなしをすればいいのに、というご意見をお持ちの方もいるでしょう。どうして宮中晩さん会はフランス料理なの? と不思議に思われる方もいると思います。実は、これには歴史的な背景があるのです。
江戸時代の終わりに、日本は欧米諸国と条約を結びましたが、それは次の2点で不平等なものでした。
①外国人が日本で犯罪を犯したとき、裁くのは日本ではなく、その外国の領事。
②関税自主権が日本にあたえられなかった。
この不平等条約を改正し、欧米諸国と対等な関係になることが、明治政府の最大の外交課題であり、当時の日本人の悲願でもありました。そのため、政府は岩倉使節団を欧米に派遣しましたが、日本はまだ文明国ではないとみなされ、相手にされませんでした。
そこで、文明国とみとめられるには、どうしたらいいのだろうか、と政府はいろいろと策を考えました。
いちばん有名なのは、よく映画やドラマにも出てくる、鹿鳴館(ろくめいかん)での西洋風の舞踏会ですが、ほかにも、宮中晩さん会ではフランス料理を出すことにし、日本はフランス料理でもてなせる文明国なんだぞ、というところを見せようとしました。つまり、その涙ぐましい努力の名残りが今にいたるまで、つづいているというわけです。
もっとも、最近では、フランス料理といっても、かなり和のテーストが加えられているらしく、昨夜の富士山型アイスクリームには、オバマ大統領のお好きな抹茶アイスクリームも使われていたらしいです(一度、食べてみたいなあ)。
ところで、不平等条約のほうは、結局、①が改正されたのが、イギリスに対しては1894年(明治27年)、そのほかの国々とは日清戦争に日本が勝利してから、②の改正は、日露戦争に日本が勝利したあとのことになりました。
あらためて、先人たちの苦労と努力に敬意をはらいたいと思います。